食中毒の疑いで病院を受診すると、まず詳細な問診が行われますが、その後、症状や重症度に応じて、いくつかの検査と治療が行われます。病院で具体的に何が行われるのか、その流れを理解しておくと、安心して診察に臨むことができます。まず、診断を確定させるための「検査」です。全ての食中毒で必ず行われるわけではありませんが、原因菌を特定する必要があると医師が判断した場合、「便培養検査」が行われます。綿棒で肛門から少量の便を採取し、それを培地で培養して、サルモネラ菌やカンピロバクター、O-157といった原因菌がいないかを調べます。結果が出るまでには数日かかります。症状が重い場合や、全身への影響を調べるために、「血液検査」が行われることもあります。白血球の数やCRP(炎症反応の指標)の値から体内の炎症の程度を確認したり、脱水の度合いや電解質のバランスを調べたりします。次に「治療」ですが、食中毒の治療の基本は、ほとんどの場合「対症療法」と「水分補給」です。対症療法とは、下痢や嘔吐といった症状そのものを和らげる治療のことです。吐き気が強い場合には「制吐剤(吐き気止め)」が、腹痛がひどい場合には「鎮痙剤(腹痛を和らげる薬)」が処方されます。腸内環境を整えるための「整腸剤(ビフィズス菌など)」も、よく処方されます。注意点として、下痢は体内の毒素を排出しようとする防御反応であるため、自己判断で市販の強力な下痢止め(止痢薬)を飲むのは、かえって回復を遅らせる可能性があり、推奨されません。そして、最も重要な治療が「水分補給」です。嘔吐や下痢によって失われた水分と電解質を補うことが、回復への一番の近道です。経口補水液(OS-1など)を少量ずつ、こまめに飲むように指導されます。もし、口から水分を摂ることができないほど衰弱している、あるいは脱水症状が著しい場合には、「点滴(静脈内輸液)」が行われます。これにより、水分と電解質を直接血管内に補給し、急速に脱水状態を改善させます。細菌性の食中毒で、症状が重い、あるいは長引く場合には、「抗菌薬(抗生物質)」が処方されることもありますが、これは原因菌の種類によって有効な薬が異なるため、医師が慎重に判断します。多くの場合、これらの治療を受け、安静にしていれば、数日で症状は快方に向かいます。