子供の舌が普段と異なり、まるで熟したイチゴの表面のように赤くブツブツとした状態になっているのを見つけたら、多くの親御さんは驚き、心配されることでしょう。この特徴的な舌の状態は「イチゴ舌」と呼ばれ、医学的には舌の表面にある無数の小さな突起である舌乳頭が炎症を起こし、赤く腫れて目立つようになったものを指します。健康な状態でも舌乳頭は存在していますが、炎症が加わることでその一つ一つが強調され、イチゴのような外観を呈するのです。イチゴ舌は、それ自体が独立した病気というわけではなく、多くの場合、何らかの基礎疾患の一症状として現れます。特に子供においてイチゴ舌が見られた場合、注意すべき代表的な病気として「溶連菌感染症」と「川崎病」が挙げられます。溶連菌感染症は、A群溶血性レンサ球菌という細菌が原因で起こる感染症で、主に喉に感染し、発熱や喉の強い痛み、体や手足に細かい発疹が現れるのが特徴です。イチゴ舌はこの溶連菌感染症の代表的な症状の一つとして広く知られています。一方、川崎病は主に4歳以下の乳幼児に多く見られる原因不明の急性熱性疾患で、全身の血管に炎症が起こります。高熱が持続し、目の充血、唇の発赤・乾燥、手足の腫れ、不定形の発疹といった症状と共に、イチゴ舌も重要な所見となります。川崎病は心臓の冠動脈に動脈瘤などの合併症を引き起こすリスクがあり、これが将来的に狭心症や心筋梗塞といった深刻な心疾患の原因となる可能性があるため、早期発見と迅速な治療開始が何よりも重要です。その他、猩紅熱(溶連菌感染症の病型の一つで、全身に発疹が出るもの)や、非常に稀ではありますが毒素性ショック症候群などでもイチゴ舌が見られることがあります。このように、子供のイチゴ舌は、単に舌が荒れているというだけでなく、背後に治療を要する病気が隠れている可能性を示唆する重要なサインです。そのため、子供の舌にイチゴのような変化を見つけたら、決して自己判断で様子を見るのではなく、速やかに小児科を受診し、医師の的確な診察を受けることが肝心です。医師はイチゴ舌以外の症状、例えば発熱の程度や期間、発疹の性状、リンパ節の腫れなどを総合的に評価し、必要に応じて迅速検査(溶連菌検査など)や血液検査、心エコー検査などを行い、適切な診断と治療方針を決定してくれます。早期の対応が子供の健康を守る鍵となります。