睡眠障害の原因は、精神的な問題や気道の問題だけではありません。身体の様々な病気や、神経系の異常が睡眠に影響を及ぼすこともあり、そのような場合は内科や脳神経内科が診療の窓口となることがあります。例えば、甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)では、新陳代謝が過剰に活発になるため、心拍数の増加、発汗、手の震えといった症状と共に、神経が高ぶって寝つきが悪くなったり、夜中に目が覚めやすくなったりすることがあります。逆に、甲状腺機能低下症では、日中の強い眠気や倦怠感が見られることがあります。これらの場合は、まず甲状腺ホルモンの値を血液検査で調べ、原因となっている甲状腺疾患の治療を内科(特に内分泌内科)で行うことが、睡眠障害の改善に繋がります。また、心不全や喘息といった呼吸器・循環器系の疾患も、夜間の息苦しさや咳によって睡眠が妨げられる原因となります。これらの疾患の治療は、それぞれの専門の内科医が担当します。腎臓病が進行し、透析治療を受けている患者さんの中には、むずむず脚症候群や周期性四肢運動障害といった睡眠関連運動障害を高頻度に合併することが知られています。脳神経内科が専門とすることが多い代表的な睡眠障害の一つに、「むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)」があります。これは、夕方から夜間にかけて、特に安静にしていると脚(時には腕にも)にむずむずするような、あるいは虫が這うような不快な感覚が現れ、じっとしていられなくなる病気です。この不快感は脚を動かすことで一時的に和らぎますが、再び安静にすると症状が現れるため、入眠困難や中途覚醒を引き起こします。原因としては、脳内の鉄不足やドーパミン機能の異常などが考えられており、鉄剤の補充やドーパミン作動薬による治療が行われます。また、レム睡眠行動障害も脳神経内科が扱うことのある睡眠障害です。これは、レム睡眠中に夢の内容に反応して大声で寝言を言ったり、手足を激しく動かしたりする病気で、パーキンソン病などの神経変性疾患の前触れとして現れることもあります。このように、睡眠の問題の背景には様々な身体的要因が隠れている可能性があります。原因不明の不眠や日中の眠気が続く場合は、まずかかりつけの内科医に相談し、必要に応じて専門の診療科を紹介してもらうのが良いでしょう。
体の病気と睡眠、内科や神経内科の視点