片方の顎の痛みが、まるで電気が走るような突発的で激しい痛みであったり、顔を洗う、歯を磨く、食事をするといった特定の動作で誘発されたりする場合、神経系の問題、特に「三叉神経痛(さんさしんけいつう)」の可能性を考える必要があります。三叉神経は顔の感覚(触覚、痛覚、温度覚)や咀嚼筋の運動を支配する神経で、左右に一本ずつ、脳から出て顔面に分布しています。この三叉神経が何らかの原因で刺激されたり圧迫されたりすると、その支配領域に激しい痛みが生じます。片方の顎や頬、歯茎、唇などに、数秒から数十秒続く、刺すような、あるいは焼けるようなと表現される非常に強い痛みが特徴的です。痛みは繰り返し起こり、痛みのない間欠期があることもあります。このような神経由来の痛みが疑われる場合には、「神経内科」または「脳神経外科」の受診が適切です。神経内科では、まず詳細な問診を行い、痛みの性質、持続時間、誘発因子、頻度などを詳しく確認します。その後、神経学的検査(顔面の感覚検査、反射の検査など)を行い、三叉神経の機能に異常がないかを調べます。三叉神経痛の原因としては、脳の血管が三叉神経を圧迫しているケース(神経血管圧迫症候群)が最も多いとされていますが、その他にも脳腫瘍や多発性硬化症などが原因となることもあります。原因を特定するために、頭部のMRI検査が行われることが一般的です。治療としては、まずカルバマゼピンなどの抗けいれん薬を用いた薬物療法が試みられます。これらの薬は、神経の異常な興奮を抑えることで痛みを軽減する効果があります。薬物療法で効果が不十分な場合や、副作用が強い場合には、神経ブロック療法(痛む神経の近くに局所麻酔薬や神経破壊薬を注射する方法)や、ガンマナイフなどの放射線治療、あるいは神経血管圧迫を解除するための外科手術(微小血管減圧術)が検討されることもあります。顎の痛みが、いわゆる顎関節症の痛みとは明らかに性質が異なると感じる場合は、神経系の疾患を疑い、専門医の診察を受けることが重要です。
神経が原因?三叉神経痛など神経内科の可能性