発熱とともに筋肉痛が現れると、多くの方はインフルエンザを疑うかもしれません。確かに、インフルエンザの代表的な症状の一つですが、実はインフルエンザ以外にも、発熱と筋肉痛を引き起こす病気はいくつか存在します。どのようなものが考えられるのでしょうか。まず、インフルエンザ以外のウイルス感染症でも、発熱と筋肉痛はよく見られます。例えば、アデノウイルス感染症、エンテロウイルス感染症(手足口病やヘルパンギーナなど)、あるいはデング熱やチクングニア熱といった蚊が媒介する感染症(主に熱帯・亜熱帯地域で流行)などでも、高熱とともに全身の筋肉痛や関節痛が現れることがあります。次に、細菌感染症です。レプトスピラ症やリケッチア感染症(ツツガムシ病など)といった特殊な細菌感染症では、発熱や頭痛、筋肉痛が主な症状となります。また、細菌が筋肉に直接感染して炎症を起こす「化膿性筋炎」や、広範囲な筋肉の壊死を引き起こす「壊死性筋膜炎」といった重篤な状態では、激しい筋肉痛と高熱、腫れなどが現れ、緊急の治療が必要です。膠原病(こうげんびょう)と呼ばれる自己免疫疾患の一部でも、発熱と筋肉痛が見られることがあります。代表的なものに、多発性筋炎や皮膚筋炎があり、筋肉の炎症と筋力低下が主な症状ですが、発熱や関節痛、皮疹などを伴うこともあります。また、血管炎(血管に炎症が起こる病気)の一部でも、発熱や筋肉痛、関節痛といった全身症状が現れることがあります。その他、薬剤の副作用として、発熱や筋肉痛が起こることもあります。特に、スタチン系薬剤(コレステロールを下げる薬)の副作用である横紋筋融解症では、筋肉痛や脱力感、赤褐色の尿などが現れ、重症化すると腎不全に至ることもあります。このように、発熱と筋肉痛の原因は多岐にわたるため、症状が強い場合や長引く場合、あるいは他の気になる症状(例えば、発疹、呼吸困難、意識障害など)を伴う場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、原因を特定してもらうことが大切です。