自律神経失調症による発熱(心因性発熱)と診断された場合、その治療は、単に熱を下げるだけでなく、根本的な原因である自律神経のバランスの乱れを整え、ストレスを軽減することを目指して行われます。薬物療法と精神療法、そしてセルフケアが組み合わせて用いられることが一般的です。薬物療法としては、まず、対症療法的に解熱鎮痛剤が処方されることもありますが、心因性発熱の場合、一般的な解熱剤の効果は限定的であることが多いと言われています。むしろ、自律神経のバランスを整えるための自律神経調整薬や、不安感や緊張感を和らげるための抗不安薬、あるいは気分の落ち込みや抑うつ症状がある場合には抗うつ薬といった、精神面に作用する薬が、医師の判断によって慎重に用いられることがあります。これらの薬は、発熱そのものを直接下げるというよりは、自律神経の乱れを整え、ストレスに対する過敏な反応を抑えることで、結果として体温調節機能の改善を促すことを目的としています。漢方薬も、個々の体質や症状に合わせて処方され、心身のバランスを整えるのに役立つことがあります。精神療法(カウンセリング)も重要な治療法の一つです。臨床心理士や公認心理師などの専門家との対話を通じて、ストレスの原因となっている問題や、自分の思考・行動パターンに気づき、ストレスへの対処法(コーピングスキル)を身につけたり、リラクセーション法(深呼吸、瞑想、漸進的筋弛緩法など)を学んだりします。これにより、ストレスに対する心身の反応を和らげ、自律神経の安定化を図ります。セルフケアとしては、まず、規則正しい生活を送ることが基本です。毎日同じ時間に寝起きし、十分な睡眠時間を確保しましょう。バランスの取れた食事を三食きちんと摂ることも大切です。適度な運動も、ストレス解消や自律神経の調整に効果的です。ウォーキングやヨガ、ストレッチなど、自分が心地よいと感じる運動を無理のない範囲で続けましょう。また、自分なりのリラックス方法を見つけ、日常生活の中で意識的に取り入れることも重要です。趣味の時間を持つ、好きな音楽を聴く、アロマテラピーを楽しむ、温かいお風呂にゆっくり浸かるなど、心身を休ませる時間を作りましょう。これらの治療法やセルフケアを根気強く続けることで、自律神経失調症による発熱の症状改善が期待できます。