太ももが急に赤く腫れ上がり、ズキズキとした激しい痛みとともに高熱が出た場合、それは「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」の可能性があります。蜂窩織炎は、皮膚の深い部分(真皮から皮下組織)に細菌が侵入し、急性の炎症を引き起こす病気で、適切な治療を行わないと重症化することもあるため注意が必要です。蜂窩織炎の原因となる細菌は、主に黄色ブドウ球菌やレンサ球菌などです。これらの細菌は、普段から私たちの皮膚や鼻の中などに存在していますが、皮膚に小さな傷やひび割れ、虫刺され、水虫などがあると、そこから侵入して増殖し、炎症を引き起こします。特に、免疫力が低下している時(例えば、疲労、ストレス、糖尿病、ステロイド治療中など)や、リンパ浮腫や静脈うっ滞などで足の血行が悪い場合は、蜂窩織炎を発症しやすくなります。太ももに蜂窩織炎が発症した場合、まず、その部分の皮膚が広範囲に赤く腫れ上がり、熱感を持ちます。境界は比較的はっきりしないことが多いです。そして、ズキズキとしたり、拍動するような強い痛みを伴います。進行すると、水ぶくれ(水疱)ができたり、皮膚の下に膿が溜まったりすることもあります。また、発熱や悪寒、全身倦怠感、頭痛といった全身症状が現れることも少なくありません。リンパ管に沿って炎症が広がると、赤い線状の皮疹(リンパ管炎)が見られたり、近くのリンパ節(例えば、足の付け根のリンパ節など)が腫れて痛んだりすることもあります。もし、太ももにこのような症状が現れたら、自己判断せずに速やかに医療機関(皮膚科や形成外科、あるいは内科など)を受診する必要があります。治療の基本は、原因となっている細菌に対する抗菌薬(抗生物質)の投与です。軽症であれば内服薬で治療可能ですが、症状が強い場合や、全身症状がある場合は、入院して点滴による抗菌薬治療が必要となることもあります。また、患部を安静にし、冷やしたり、足を高く上げたりすることも症状の緩和に役立ちます。早期発見と早期治療が、重症化を防ぐために非常に重要です。