腕や足がむくむと、リンパ浮腫を心配される方もいるかもしれませんが、むくみの原因はリンパ浮腫だけではありません。似たような症状を引き起こす他の病気も存在するため、正確な診断が重要です。リンパ浮腫と間違えやすい代表的なむくみの原因をいくつかご紹介します。まず、「静脈性の浮腫」です。これは、足の静脈の血流が悪くなること(うっ滞)が原因で起こるむくみで、代表的なものに「下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)」や「深部静脈血栓症(しんぶじょうみゃくけっせんしょう)およびその血栓後遺症」があります。下肢静脈瘤では、足の血管がボコボコと浮き出たり、だるさやこむら返りを伴ったりします。深部静脈血栓症は、片足が急に腫れて痛むのが特徴で、血栓が肺に飛ぶと肺塞栓症という命に関わる状態になることもあります。これらの場合は、循環器内科や血管外科が専門となります。次に、「心臓性の浮腫」です。「心不全」など、心臓のポンプ機能が低下すると、全身の血液循環が悪くなり、特に体の低い部分である足に水分が溜まりやすくなり、むくみが生じます。息切れや動悸、体重増加といった症状を伴うことがあります。これも循環器内科が専門です。また、「腎臓性の浮腫」も考えられます。「腎不全」や「ネフローゼ症候群」など、腎臓の機能が低下すると、体内の水分や塩分の調節がうまくいかなくなり、むくみが生じます。顔やまぶたにもむくみが出やすいのが特徴で、尿量の変化やタンパク尿、血尿などを伴うことがあります。腎臓内科が専門です。その他、「肝臓性の浮腫」(肝硬変など)や、「甲状腺機能低下症」といった内分泌疾患、「低栄養状態(特にタンパク質不足)」、「薬剤の副作用(例えば、一部の降圧薬や痛み止めなど)」なども、むくみの原因となることがあります。これらは主に内科で診療が行われます。リンパ浮腫は、通常、片側の腕や足に起こりやすく、進行すると皮膚が硬くなるという特徴がありますが、初期には他の原因によるむくみとの区別がつきにくいこともあります。自己判断せずに、まずはかかりつけ医や、むくみの専門知識を持つ医師に相談し、原因を特定してもらうことが大切です。