片方の顎に痛みを感じ、歯科や口腔外科を受診した場合、どのような診断と治療が行われるのでしょうか。まず、歯科医師または口腔外科医は、患者さんから詳しい話を聞く「問診」を行います。いつから痛むのか、どのような時に痛むのか(食事中、会話中、何もしていない時など)、痛みの程度や性質(ズキズキ、ジンジン、重い感じなど)、口の開けにくさや音の有無、過去の歯科治療歴、生活習慣(歯ぎしり、食いしばり、頬杖、ストレスの状況など)について詳しく尋ねられます。これらの情報は、痛みの原因を特定する上で非常に重要です。次に、顎関節や周囲の筋肉を直接触って状態を確認する「触診」や、口の開け閉めの状態、顎の動きなどを視診で確認します。必要に応じて、顎関節のレントゲン撮影(パノラマX線写真や顎関節専用のX線写真など)を行い、骨の異常や関節円板の位置などを評価します。より詳細な情報が必要な場合には、CT検査やMRI検査といった画像診断が行われることもあります。これらの検査結果と問診内容を総合的に判断し、顎関節症やその他の原因疾患(例えば、歯性感染症、親知らずの問題、顎骨内の病変など)の診断を下します。顎関節症と診断された場合の治療法は、症状の程度や原因によって異なりますが、一般的には保存的治療から開始されます。最も一般的なのは、夜間や日中に装着するマウスピース(スプリント)を用いた「スプリント療法」です。これは、歯ぎしりや食いしばりによる顎関節への負担を軽減し、筋肉の緊張を和らげる効果があります。また、痛みが強い場合には「薬物療法」として消炎鎮痛剤や筋弛緩薬などが処方されます。顎関節や咀嚼筋のマッサージ、温熱療法、開口訓練などの「理学療法」も有効な場合があります。さらに、顎に負担をかけるような生活習慣(硬いものを頻繁に食べる、片側だけで噛む、うつ伏せ寝など)の改善指導も行われます。これらの保存的治療で改善が見られない場合や、症状が重篤な場合には、関節腔内洗浄や外科手術が検討されることもありますが、これは比較的稀なケースです。大切なのは、専門医の指示に従い、根気強く治療を続けることです。