自律神経失調症による発熱(心因性発熱)は、他の様々な病気による発熱と症状が似ていることがあるため、正確な鑑別診断が非常に重要です。自己判断はせず、必ず医療機関を受診し、医師の診察を受けるようにしましょう。鑑別すべき代表的な病気をいくつかご紹介します。まず、最も一般的なのが「感染症」です。風邪やインフルエンザ、扁桃炎、気管支炎、肺炎、尿路感染症、あるいは結核といった感染症は、発熱の主な原因となります。これらの場合は、発熱以外に、喉の痛み、咳、鼻水、痰、関節痛、筋肉痛、排尿時痛、血尿といった、それぞれの感染部位に応じた特徴的な症状や、血液検査での炎症反応(白血球数やCRPの上昇)が見られることが多いです。次に、「膠原病(こうげんびょう)」や「血管炎」といった自己免疫疾患です。関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、成人スティル病、リウマチ性多発筋痛症などは、原因不明の発熱とともに、関節痛、筋肉痛、皮疹、リンパ節腫脹といった多彩な症状が現れることがあります。血液検査で自己抗体や炎症マーカーの上昇が見られることが診断の手がかりとなります。また、「悪性腫瘍(がん)」も、発熱の原因となることがあります。特に、悪性リンパ腫や白血病といった血液のがんや、腎臓がん、肝臓がんなどの固形がんでも、原因不明の発熱(腫瘍熱)が見られることがあります。体重減少や寝汗、貧血、リンパ節の腫れといった症状を伴う場合は注意が必要です。「甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)」では、代謝が活発になり、微熱や多汗、動悸、体重減少、手の震えといった症状が現れます。「薬剤熱」といって、服用している薬の副作用として発熱が起こることもあります。これらの疾患は、それぞれ専門的な検査や治療が必要となります。自律神経失調症による発熱と診断するためには、まずこれらの器質的な疾患を、問診、診察、血液検査、尿検査、画像検査(レントゲン、CT、MRIなど)、必要に応じて生検などを用いて、一つ一つ丁寧に除外していく必要があります。
自律神経失調症の発熱と他の病気との鑑別