爪周囲炎が疑われる場合、医療機関ではどのような流れで診断が行われ、どのような検査が必要になるのでしょうか。そのプロセスを理解しておくと、安心して受診できるでしょう。まず、医療機関(主に皮膚科や整形外科など)を受診すると、医師による詳しい問診が行われます。いつから、どの指(または足の指)の、どの部分が、どのように痛むのか、赤みや腫れ、熱感、膿の有無、過去に同様の症状があったか、爪の切り方や手入れの習慣、水仕事の頻度、指しゃぶりや爪を噛む癖の有無、他に気になる症状はないか、既往歴(特に糖尿病など)、服用中の薬などを詳しく聞かれます。次に、視診と触診です。医師は、患部の状態(赤み、腫れ、熱感、膿の有無、水疱の有無、爪の形や色、爪の周囲の皮膚の状態など)を注意深く観察し、触って圧痛(押したときの痛み)の程度や範囲、腫れの硬さなどを確認します。爪が皮膚に食い込んでいないか(陥入爪)、巻き爪になっていないかなどもチェックします。多くの場合、この問診と診察所見から、爪周囲炎の診断が下されます。しかし、原因となっている病原体(細菌か真菌かなど)を特定するためや、他の疾患との鑑別、あるいは治療方針の決定のために、いくつかの検査が行われることがあります。代表的な検査としては、「細菌培養検査」や「真菌検査(KOH直接鏡検)」があります。これらは、患部から膿や皮膚の鱗屑(フケのようなもの)を少量採取し、顕微鏡で観察したり、培養したりすることで、細菌や真菌の有無、種類を調べる検査です。原因菌が特定できれば、より効果的な抗菌薬や抗真菌薬を選択することができます。また、炎症の程度が強い場合や、深部への感染が疑われる場合には、血液検査で炎症反応(白血球数やCRPなど)を調べたり、レントゲン(X線)検査で骨への影響がないかを確認したりすることもあります。爪の変形が著しい場合や、手術を検討する際には、より詳細な画像検査(MRIなど)が行われることも稀にあります。これらの問診、診察、検査結果を総合的に判断し、医師は爪周囲炎の診断を下し、その原因と重症度を評価して、適切な治療方針を決定します。