爪の周りが赤く腫れてズキズキ痛み、膿が溜まっているのが見えると、つい自分で針などで刺して膿を出してしまいたくなるかもしれません。一時的に楽になるような気もしますが、実は、爪周囲炎の膿を自分で出すことは、いくつかのリスクが伴うため、基本的には避けるべきです。なぜ自分で膿を出すのが良くないのでしょうか。まず、衛生管理の問題があります。自宅にある針や器具は、十分に消毒されていない可能性が高く、それらを使って皮膚を傷つけると、新たな細菌が侵入し、感染を悪化させたり、別の種類の細菌による混合感染を引き起こしたりする危険性があります。また、膿を出す際に、周囲の健康な皮膚組織まで傷つけてしまい、炎症を広げてしまう可能性も否定できません。次に、膿を完全に出し切れない可能性があるという点です。膿瘍(膿のたまり)は、皮膚の表面だけでなく、ある程度の深さまで及んでいることがあります。表面に見えている部分だけを潰しても、奥に残った膿が排出されなければ、根本的な解決にはならず、症状が改善しなかったり、すぐに再発したりすることがあります。さらに、無理に圧迫して膿を出そうとすると、細菌が血管やリンパ管を通って周囲の組織に広がり、蜂窩織炎(ほうかしきえん)やリンパ管炎といった、より広範囲で重篤な感染症を引き起こすリスクも高まります。そして、最も重要なのは、その症状が本当に爪周囲炎による膿なのか、あるいは他の病気(例えば、ヘルペス性ひょう疽の水疱や、稀ですが腫瘍など)ではないのかを、自己判断することは難しいという点です。もし、爪の周りに膿が溜まっているようであれば、自己判断で処置をせず、必ず皮膚科や整形外科などの医療機関を受診しましょう。医師は、清潔な環境で、適切な器具を用い、必要であれば局所麻酔をして、安全かつ確実に排膿処置を行ってくれます。また、原因菌に合わせた適切な抗菌薬の処方や、その後のケア方法についても指導してくれます。自分で無理な処置をすることは避け、専門医の診察を受けることが、安全で確実な治療への近道です。
爪周囲炎自分で膿を出すのはNG?