ある日突然、あるいは徐々に、片方の顎に痛みを感じるようになったら、日常生活にも支障をきたすことがあり、不安になるものです。「口を開けにくい」「食事の時に痛む」「カクカク音がする」といった症状が伴う場合、まず疑われるのが「顎関節症(がくかんせつしょう)」です。顎関節症は、顎の関節やその周りの筋肉(咀嚼筋)に問題が起こることで発症し、20代から30代の女性に比較的多く見られると言われていますが、年齢や性別を問わず誰にでも起こりうる疾患です。主な症状としては、顎の痛み(特に顎関節部や咀嚼筋)、口が開きにくい(開口障害)、口を開け閉めする際に音がする(クリック音やジャリジャリという音)、などがあります。これらの症状が片方の顎だけに現れることも少なくありません。では、このような顎の痛みに気づいたら、何科を受診すれば良いのでしょうか。顎関節症の診断と治療を専門的に行っているのは、主に「歯科」または「口腔外科(こうくうげか)」です。かかりつけの歯科医院がある場合は、まずそこで相談してみるのが良いでしょう。歯科医師は、問診や触診、レントゲン撮影などを行い、顎関節や周囲の筋肉の状態を評価します。症状の程度や原因によっては、より専門的な検査や治療が必要となる場合もあり、その際には口腔外科を紹介されることもあります。口腔外科は、口の中だけでなく、顎や顔面領域の外科的疾患を扱う診療科であり、顎関節症の専門的な治療にも対応しています。初期の顎関節症であれば、生活習慣の改善指導(硬いものを避ける、頬杖をつかないなど)や、マウスピース(スプリント)を用いた治療、消炎鎮痛剤の処方などで症状が改善することが多いです。しかし、自己判断で放置してしまうと、症状が悪化したり慢性化したりする可能性もあるため、早めに専門医に相談することが大切です。顎の痛みは、単なる一時的な不調と軽視せず、適切な診断と治療を受けることで、快適な日常生活を取り戻す第一歩となります。
片方の顎が痛む時まず疑うべき症状と受診科