川崎病は、主に4歳以下の乳幼児に好発する原因不明の急性熱性発疹性疾患であり、全身の血管、特に心臓に栄養を送る冠動脈に炎症が起こりやすいという特徴があります。この冠動脈の炎症が進行すると、冠動脈瘤(血管がこぶのように膨らむ)や狭窄(血管が狭くなる)といった合併症を引き起こす可能性があり、これが将来的に狭心症や心筋梗塞、さらには突然死といった深刻な心臓の問題に繋がるリスクを孕んでいます。そのため、川崎病は早期診断と早期治療開始が何よりも重要視される病気です。川崎病の主要な症状の一つとして、発症してから数日後にイチゴ舌が現れることがあります。舌全体が鮮やかに赤くなり、舌乳頭が炎症で腫れてブツブツと目立つ状態は、溶連菌感染症で見られるイチゴ舌と見た目上は非常に似ています。したがって、イチゴ舌という所見だけで川崎病と断定することはできませんが、他の主要症状と併せて総合的に判断されます。川崎病の診断基準として用いられる主な症状は以下の6つです。5日以上続く原因不明の発熱(多くは38℃以上で、解熱剤が効きにくいのが特徴)。両眼の結膜の充血(ただし、目やには伴わないことが多い)。口腔・咽頭所見として、口唇の著明な発赤・乾燥・亀裂、口腔咽頭粘膜のびまん性の発赤、そしてイチゴ舌。不定形の発疹(麻しん様、風しん様など様々で、時にBCG接種痕が赤く腫れ上がることもある)。四肢末端の変化として、手足の硬性浮腫(パンパンに腫れる)、手掌や足底の紅斑(赤くなる)。回復期には指先からの膜様落屑(皮がむける)が見られる。急性期の非化膿性の頸部リンパ節腫脹(通常は片側性で、1.5cm以上の大きさに腫れる)。これらの主要症状のうち5つ以上を満たすと典型的な川崎病と診断されます。しかし、4つの症状しか満たさなくても、心エコー検査で冠動脈に異常が見つかったり、他の検査所見から川崎病が強く疑われる場合には、「非定型川崎病」として治療が開始されることもあります。イチゴ舌に加えて、上記の主要症状のうち複数が当てはまる場合、特に高熱が5日以上続く、目が赤い、唇が真っ赤、体に発疹が出ている、手足が腫れているといった症状が見られたら、決して自己判断で様子を見たり、一般的な風邪薬で済ませたりせず、直ちに小児科、できれば入院施設のある総合病院の小汁科を受診してください。