インフルエンザの予防接種に使われるワクチンには、いくつかの種類があることをご存知でしょうか。日本では、現在主に「不活化ワクチン」が用いられていますが、その中でも価数(対応できるウイルスの型の数)によって違いがあります。また、海外では異なる種類のワクチンが使われていることもあります。現在、日本でインフルエンザの定期予防接種や任意接種で広く用いられているのは、「3価ワクチン」または「4価ワクチン」と呼ばれる不活化ワクチンです。不活化ワクチンとは、インフルエンザウイルスの感染力をなくし(不活化し)、免疫を作るのに必要な成分だけを取り出して作られたワクチンです。生きたウイルスを使用していないため、ワクチン接種によってインフルエンザを発症することはありません。3価ワクチンは、A型のインフルエンザウイルス2種類(H1N1型とH3N2型)と、B型のインフルエンザウイルス1種類(山形系統またはビクトリア系統のどちらか)に対応しています。一方、4価ワクチンは、A型2種類とB型2種類(山形系統とビクトリア系統の両方)に対応しており、より広範囲のインフルエンザウイルスに対する予防効果が期待できます。日本では、2015年から4価ワクチンが主流となっています。これらの不活化ワクチンの主な効果は、前述の通り、発症予防効果と、発症した場合の重症化予防効果です。特に、高齢者や基礎疾患を持つ方など、重症化リスクの高い人にとっては、この重症化予防効果が非常に重要となります。また、海外では、「生ワクチン(経鼻インフルエンザ生ワクチン)」が一部の国で使用されています。これは、弱毒化した生きたインフルエンザウイルスを鼻から噴霧するタイプのワクチンで、不活化ワクチンとは異なる免疫応答を誘導するとされています。しかし、日本では現在のところ承認されていません。ワクチンの種類によって、対象年齢や接種回数、副反応の現れ方などに違いがある場合もあります。どのワクチンを接種するかについては、医師とよく相談し、その年の流行状況や個人の健康状態などを考慮して決定することが大切です。