下肢静脈瘤の治療は、主に血管外科や心臓血管外科が中心となって行いますが、患者さんの状態や合併症の有無によっては、他の診療科との連携が非常に重要になることがあります。例えば、下肢静脈瘤が進行し、皮膚にうっ滞性皮膚炎や難治性の潰瘍(かいよう)を生じている場合、血管外科での静脈瘤治療と並行して、「皮膚科」による専門的なスキンケアや創傷管理が必要となります。皮膚科医は、適切な外用薬の選択やドレッシング材の使用、感染コントロールなどを行い、潰瘍の治癒を促進します。また、糖尿病や閉塞性動脈硬化症といった他の血管系疾患を合併している患者さんの場合、これらの疾患の管理も同時に行う必要があります。糖尿病は血管を傷つけやすく、創傷治癒を遅らせるため、「糖尿病内科」や「内分泌内科」との連携が不可欠です。血糖コントロールを良好に保つことが、下肢静脈瘤治療の成功にも繋がります。閉塞性動脈硬化症は、足の動脈が狭窄・閉塞する病気で、下肢静脈瘤とは異なる病態ですが、両者を合併している場合、治療方針を慎重に決定する必要があります。この場合も、血管外科が動脈と静脈の両方の評価と治療を行うか、あるいは循環器内科と連携することもあります。肥満は下肢静脈瘤の危険因子の一つであり、体重コントロールが症状改善に繋がることもあります。その場合は、「内科」や栄養指導部門との連携が有効です。さらに、下肢静脈瘤の手術や血管内治療を行う際には、麻酔科医の協力が不可欠です。特に全身麻酔や脊椎麻酔が必要な場合、安全な手術のためには「麻酔科」の専門的な管理が求められます。このように、下肢静脈瘤の治療は、単一の診療科だけで完結するとは限りません。患者さん一人ひとりの状態に合わせて、複数の診療科がそれぞれの専門性を活かして協力し合うことで、より安全で効果的な治療が実現できるのです。信頼できる主治医のもと、必要に応じて適切な連携医療を受けられる体制が整っているかどうかも、医療機関を選ぶ上での一つのポイントと言えるでしょう。
下肢静脈瘤治療における連携診療科の重要性