動悸は、男性だけでなく女性にも起こりうる症状ですが、女性の場合、特有のライフステージの変化やホルモンバランスの変動が、動悸の原因となることがあります。まず、妊娠中は、お腹の赤ちゃんに十分な酸素や栄養を送るために、母体の血液量が増加し、心拍数もやや上昇する傾向があります。また、大きくなった子宮が心臓を圧迫したり、横隔膜を押し上げたりすることで、動悸を感じやすくなることがあります。貧血も妊娠中には起こりやすく、これも動悸の原因となります。出産時や産後も、ホルモンバランスの急激な変化や、出血、疲労、睡眠不足、育児のストレスなどが、自律神経のバランスを乱し、動悸を引き起こすことがあります。次に、更年期(一般的に40代後半から50代半ば頃)も、動悸を感じやすい時期です。更年期には、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に減少し、自律神経のコントロールが不安定になります。その結果、ホットフラッシュ(のぼせや顔のほてり、発汗など)とともに、突然の動悸や息切れ、めまい、不安感といった症状が現れることがあります。これを「更年期障害」の症状の一つとして捉えることができます。また、月経周期に関連して動悸を感じる方もいます。月経前症候群(PMS)の症状の一つとして、あるいは月経中の貧血などが原因で動悸が起こることがあります。さらに、甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)は、女性に比較的多く見られる病気で、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで、動悸や頻脈、手の震え、体重減少、多汗、眼球突出といった症状が現れます。これらの女性特有の原因による動悸の場合、それぞれの原因に応じた治療や対処が必要となります。妊娠中や産後の動悸であれば産婦人科、更年期障害が疑われる場合は婦人科や更年期外来、甲状腺疾患が疑われる場合は内分泌内科などが専門となります。まずはかかりつけ医に相談し、適切な診療科を紹介してもらうのが良いでしょう。