下肢静脈瘤の診断は、まず詳細な問診と視診から始まります。いつからどのような症状があるのか、立ち仕事の有無、妊娠・出産歴、家族歴などを詳しく聞き取り、足の状態(血管の浮き出し方、皮膚の色、むくみの程度など)を観察します。この段階で、ある程度下肢静脈瘤の疑いが持たれますが、確定診断と重症度の評価のためには、超音波(ドップラー)検査が不可欠です。この検査は、下肢静脈瘤の診療を行う上で中心的な役割を担い、主に「血管外科」や「心臓血管外科」で行われます。超音波検査では、皮膚の上からプローブを当てるだけで、静脈の太さ、血液の逆流の有無とその程度、血栓の存在などをリアルタイムで確認できます。この検査結果に基づいて、静脈瘤のタイプ(伏在型、側枝型、網目状、クモの巣状など)や原因となっている静脈、治療の必要性などが判断されます。血管外科や心臓血管外科は、この診断プロセス全体を担い、その後の治療方針(保存療法、硬化療法、血管内焼灼術、手術など)の決定から実施までを一貫して行うことができます。一方、「皮膚科」を受診した場合、主な役割は下肢静脈瘤に伴う皮膚症状(うっ滞性皮膚炎、色素沈着、潰瘍など)の診断と治療になります。皮膚の炎症を抑えるための外用薬の処方やスキンケア指導などが行われますが、超音波検査による静脈の評価は通常行われず、根本原因である静脈瘤の治療は専門外となるため、必要に応じて血管外科を紹介することになります。「一般内科」や「整形外科」でも、足のむくみやだるさといった症状で相談を受けることがありますが、これらの診療科では下肢静脈瘤の専門的な診断や治療は行わず、疑わしい場合に血管外科を紹介するという形が一般的です。したがって、下肢静脈瘤の正確な診断と適切な治療を求めるのであれば、最初から血管外科または心臓血管外科を受診するのが最も効率的と言えるでしょう。
下肢静脈瘤の診断プロセスと各診療科の役割