子供に見られるイチゴ舌の原因として、最も頻度が高い疾患の一つが「溶連菌感染症」です。この感染症は、正式にはA群溶血性レンサ球菌という細菌によって引き起こされ、主に喉(咽頭や扁桃)に感染して様々な症状を呈します。溶連菌感染症におけるイチゴ舌は、その診断において非常に特徴的かつ重要な所見とされています。発症初期には、舌の表面に白い苔状のものが付着し、その隙間から炎症で赤く腫れた舌乳頭がブツブツと顔を出す「白いイチゴ舌」として現れることがあります。これが数日経過すると、白い苔が剥がれ落ち、舌全体が鮮やかな赤色を呈し、まるで熟したイチゴの表面のようにブツブツ感が際立つ「赤いイチゴ舌」へと変化していくのが典型的な経過です。このイチゴ舌は、しばしば喉の強い痛みを伴います。イチゴ舌以外にも、溶連菌感染症はいくつかの特徴的な症状を示します。最も一般的なのは、突然の発熱(38~39℃程度の高熱が多い)と、嚥下時(ものを飲み込むとき)の強い喉の痛みです。喉の奥を観察すると、扁桃腺が赤く腫れ上がり、時には白い膿のようなものが付着していることもあります。また、猩紅熱(しょうこうねつ)と呼ばれるタイプの溶連菌感染症では、体幹部や手足の付け根を中心に、細かく赤い点状の発疹が広がり、触れるとザラザラとした紙やすりのような感触があるのが特徴です。顔にも発疹が見られることがありますが、口の周りだけが白く抜けて見える「口囲蒼白(こういそうはく)」という所見も特徴的です。その他、頭痛、腹痛、嘔吐、首のリンパ節の腫れと痛みを伴うこともあります。一方で、通常の風邪でよく見られる咳や鼻水といった症状は、溶連菌感染症では比較的少ない傾向にあります。溶連菌感染症の診断は、これらの臨床症状に加え、喉の粘液を綿棒で採取して行う迅速診断キットや培養検査によって確定されます。治療には、ペニシリン系などの抗菌薬が用いられ、これを医師の指示通りに適切な期間(通常10日間程度)服用することが非常に重要です。症状が改善したからといって自己判断で服薬を中止してしまうと、菌が完全に除去されずに再発したり、リウマチ熱や急性糸球体腎炎といった深刻な合併症を引き起こすリスクがあるため、必ず最後まで飲み切る必要があります。イチゴ舌があり、上記のような症状が見られた場合は、速やかに小汁科を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。
溶連菌感染症によるイチゴ舌その特徴と正しい対処法