「心因性発熱」という言葉を聞いたことがありますか。これは、精神的なストレスや心理的な葛藤が原因で、体温調節中枢の機能に異常が生じ、発熱(多くは微熱から38度程度の熱)が起こる状態を指します。自律神経失調症の一症状として現れることも多く、検査をしても明らかな感染症や炎症性の病気が見つからない場合に、この診断が考慮されることがあります。心因性発熱のメカニズムは、まだ完全には解明されていませんが、ストレスが脳の体温調節中枢(視床下部など)に影響を与え、交感神経の過緊張や、炎症性サイトカイン(炎症を引き起こす物質)の産生亢進などを介して、体温が上昇すると考えられています。特に、慢性的なストレスや、強い精神的ショック、抑うつ状態、不安障害などが背景にあることが多いと言われています。心因性発熱の特徴としては、まず、一般的な感染症のような喉の痛みや咳、鼻水といったカタル症状が乏しいか、全くないことが多いです。また、血液検査をしても、白血球数やCRPといった炎症反応の数値に異常が見られないことが一般的です。体温の変動パターンも特徴的で、ストレス状況に応じて体温が上昇したり、夕方になると熱が上がりやすかったり、あるいは微熱がだらだらと数週間から数ヶ月以上続くこともあります。そして、一般的な解熱剤(非ステロイド性抗炎症薬など)があまり効かないことが多いのも、心因性発熱の一つの目安とされています。むしろ、抗不安薬や抗うつ薬といった精神面に作用する薬によって、解熱効果が見られる場合があります。ただし、これらの特徴だけで心因性発熱と自己判断するのは非常に危険です。発熱の原因は多岐にわたり、中には見逃してはいけない重篤な疾患(例えば、結核や膠原病、悪性腫瘍など)が隠れている可能性も否定できません。38度程度の発熱が続く場合は、まずは内科を受診し、感染症や炎症性疾患などの器質的な病気がないかをしっかりと調べてもらうことが大前提です。その上で、他に原因が見当たらない場合に、心因性発熱の可能性が検討されます。
ストレスが原因?38度の発熱と心因性発熱