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境界型糖尿病は治るのか?正常型に戻るための道筋
健康診断で「境界型糖尿病」と指摘された時、多くの人が抱く切実な願い、それは「この状態から、元の健康な『正常型』に果たして戻れるのだろうか?」という問いです。その答えは、非常に希望に満ちたもので、「Yes、適切な対策を講じれば、正常型に戻ることは十分に可能」です。境界型糖尿病は、本格的な糖尿病とは異なり、まだインスリンを分泌する膵臓の機能が完全に破壊されたわけではない、可逆的な段階です。いわば、体からの「最後の警告」であり、生活習慣を見直すための「猶予期間」が与えられた状態なのです。では、正常型に戻るためには、どのような道筋をたどればよいのでしょうか。その鍵は、境界型糖尿病の二大原因である「インスリン抵抗性」と「インスリン分泌不全」を改善することにあります。そして、そのための最も強力な武器が、「食事療法」と「運動療法」という、生活習慣の根本的な見直しです。まず、食事療法では、過食をやめ、適切なカロリー摂取を心がけることで、肥満、特にインスリン抵抗性の最大の原因である内臓脂肪を減らします。食物繊維を多く含む野菜から先に食べる「ベジファースト」を実践し、食後の血糖値の急上昇を抑える。炭水化物の量と質を見直し、ジュースやお菓子を控える。これらの地道な努力が、インス- リンが働きやすい体内環境を再構築します。次に、運動療法では、ウォーキングなどの有酸素運動と、筋力トレーニングを組み合わせることで、筋肉でのブドウ糖消費を促し、インスリン抵抗性を直接的に改善します。運動によって筋肉量が増えれば、インスリンの効き目はさらに高まります。研究によれば、境界型糖尿病の人が、これらの生活習慣の改善に集中的に取り組むことで、本格的な糖尿病への進行リスクを約60%も減少させることができた、という大規模な臨床試験の結果も報告されています。重要なのは、「すぐに結果を求めない」こと、そして「継続する」ことです。体重が1kg減る、ヘモグロビンA1cが0.1%下がる、といった小さな変化を喜び、モチベーションに変えながら、健康的な生活を習慣として定着させていく。その先にこそ、「正常型」というゴールが待っているのです。境界型糖尿病は、絶望の診断ではなく、人生をより健康的にリセットするための、最高のチャンスなのです。